HELLO WORLD

 2年前に公開されたHELLO WORLD。衝撃のラストという宣伝文句と共に天気の子を見に行ったときの予告編で気を惹かれたのが記憶に新しい。
 今回はそのHELLO WORLDがアマプラにあったのでその視聴記録を残しておく。
 舞台は2027年京都。量子コンピュータアルタラにより無限の情報を記録することができるようになっている。そこに住む高校生堅書直実は引っ込み思案の文学少年。ある日十年後の自分を名乗る非実態物と出会い、ここが電脳世界のシミュレーションであることを知る。十年後の自分の目的は現実では死んでしまった一行瑠璃との死ななかった世界線の記録を得ること。とはいえそんなことでこんな大掛かりなことしないだろうし(予測地点と違うところにダイブしてることに驚いてる点から技術的に不安定と見られる)おおかたこの世界の直実を排斥してなり変わるかこの世界の一行瑠璃を連れ出して器に入れて自分の世界に持ってくるぐらいしそう。もともとシナリオは凝ってるらしいしパテマのようにこの10年後の直実すらシミュレーションの世界からきてる入れ子かもなと適当に妄想。
ここからしばらくは日常パート。10年後の直実から聞いたシナリオ通りにグッドデザインというマジックアイテムを駆使するなどして一行瑠璃との仲を深めていく。その様子は学年のアイドル三鈴に微笑ましく見守られている。途中の古本市イベントで瑠璃の古本を学校に持っていくも全て燃やされて古本市が中止になるということが10年後の自分によるシナリオだが直実の感情で一部蔵書をグッドデザインで復元し歴史を改変。これ以降この世界の自動修復システム(電脳コイルにおけるサッチーのようなもの)に監視されることになる。そうして無事瑠璃の死ぬイベントを乗り越えた矢先に10年後の自分が豹変する。やはり目的は脳死した彼女の代わりとなる精神の吸い上げでこの世界から自分の世界へ瑠璃を転送する。このあたりで「サカサマのパテマ」よろしく10年後もシミュレーションの世界の中でその20年後の瑠璃が直実を救うとかいうシナリオかなと予想がつく。
 物語としてはここから直実が10年後に連れて行かれてしまうもカラス(その正体は映画の最後で未来の瑠璃であることがわかる)の助けによりグッドデザイン携えて10年後の世界から瑠璃を連れ戻す。修復システムによる妨害を回潜って瑠璃は向こうの世界に送れるも直実は通れず、この10年後の世界に二人いる直実を修復するためシステムは動き採集的に10年後の直実は死ぬ。その後、この世界のアルタラは消失し、当時の瑠璃と直実は二人の生きている世界線で新しい世界を紡いでいく。
 最後に別の直実は目を覚まし瑠璃と会う。舞台は月面。即ちさらなる未来。ここはその逆で瑠璃が直実を救おうとしていた。


 ざっくりしたあらすじは上記の通り。読んでわかるように大まかなあらすじは予見できる手垢にまみれた芸当となっている。まあ、時系列や入れ子構造あるあるのトリックだよね。
 登場人物は各時系列の二人に絞ってるからか脇役の動きが少ない。思わせぶりにクラスのアイドルを随所で影から出していながらその実賑やかしである。群像劇にしてはいけないがこうもこじんまりしてるのも大仰な舞台に対していささか寂しくはないか?
 全体的に否定的だが優れている点は精緻な京都の描写。住む人ならすぐわかるぐらい細かく再現されており、一度訪れた堀川高校はモデルにしたとあって瓜二つである。バス停やその車内、京都駅の大階段など地元民に嬉しい。
 とまあ結論から言うと時間の無駄とまでは言わないが映画館に行ってまで見ようとは思わない作品で天気の子と公開日が被っているのは気の毒この上ない。面白くないわけではないがせっかく恵まれた舞台装置と小道具を貰いながらなぜもっと面白くできなかったのかと思わざるを得ない。つくづく惜しい作品