【ネタバレ有り】機動戦士ガンダム、閃光のハサウェイ

ガンダムシリーズをダブルオーの小説しか知らない(しかも10年前なのでもはや軌道エレベーターぐらいしか記憶がない)自分が閃光のハサウェイを見てきたのでその感動を続編が出たときのために記す。結論から言うと面白かったし、もう一度見たいぐらいにはよくできている映画だった。

 

 物語の始まりは地球へ向かうスペースシャトル「ハウンゼン」から。さながら飛行機の機内のような内装にキャビンアテンダントのような人もいるが、そこは無重力機内食の回収や後に出てくる手洗いにその違いが表れていた。船内の人は富裕層と連邦政府の関係者。向かう先で会議があるらしい。マフティーという反社会組織が人類を地球から追い出すべく活動しており政府関係者を狙っているという不穏な話がまことしやかにささやかれる。スペースシャトルに何かが飛来し接続、テロリストが乗り込み銃撃戦が始まり死傷者が出る。マフティーと名乗る覆面のテロリストはハイジャックを敢行し、ハサウェイを始めとする乗客のいる場所に乗り込んできた。そこで乗客名簿を手に入れ照会している最中、騒ぐ男を射殺。男の処理をハサウェイに委ねるも殺された男の妻が泣き喚いたためさらに射殺。この光景に魔性の女ギギが「やっちゃいなよ、そんな偽物なんて!」とハサウェイを焚きつける。これは予告編にも登場するセリフだがその使われ方からてっきりガンダムのことを指しているのかと思いきや、その対象はマフティー(と自称するテロリスト)に対してだったのは舌を巻いた。さらに面白いのは後に明らかとなるハサウェイがマフティーであるということからマフティー自身は相手が偽物だと当然わかるわけだがギギの観察眼が披露されている。動き出したマフティーはテロリストを次々と撃ち、最後は柔術で捉えるも視界外の敵から撃たれそうになる。そこを乗り合わせたケネス大佐が仕留めてハイジャックを失敗に終わらせた。この銃撃戦は本作における3大見どころの一つとして取り上げることのできるシーン。

 ここからは平穏パート。ダバオに不時着したハサウェイらは地元警察から事情聴取を受けることになる。空港のロビーではハサウェイとギギが会話をするがその本懐を理解することができなかったのが悲しいところ。「マフティーのやってること正しくないよ」というセリフは印象的。統治は神によってという何やら神権政治めいた話もある。何はともあれギギに気に入られたハサウェイは高級ホテルにともに泊まることに。その後、ギギと別れて散歩と称し何やら裏組織の仲間(後にマフティーの同志であることがわかる)と情報交換をし、ここを攻撃するという作戦が判明。ホテルに戻り攻撃されるときを待つことに。

 深夜4時。ハサウェイことマフティーの仲間と思われる人物がモビルスーツに乗ってダバオに空襲を仕掛けようとし、ハサウェイの泊っているホテルや近隣のホテルにビームライフルで攻撃を仕掛けて、ダバオを防衛するモビルスーツと対峙することに。ここがこの映画の一番の盛り上がりといってもいい部分であり第二の見どころである。ハサウェイがいることを知りながら、逃げていてくれよと祈りながらモビルスーツで街に攻撃するマフティー側のモビルスーツ。ハサウェイはギギを起こしてホテルから脱出する。そこから仲間に会うも情によりギギを救うことを優先。詳しい因果関係は不明だがこれにより後にこの町に攻撃を仕掛けた仲間がモビルスーツごと拿捕されてしまう。町の防衛戦力とモビルスーツ戦になり町を背後に人質とした立ち位置を取るも相手はお構いなしにビームライフルで攻撃を仕掛けてくる。当然外れた攻撃は町に直撃し破壊される。ハサウェイの視点は巨大なモビルスーツの交戦による影響を受け、人々の悲鳴や建物の崩壊に巻き込まれるもギギを抱えながら逃げ惑う姿が見事なカメラワークによって表現されている。最後はモビルスーツの肉弾戦をしたから眺める構図となり、隠れこんだ建物の上にモビルスーツが立ち崩壊するなど波乱万丈の末に何とか生き延びる。モビルスーツ戦の最後は閃光と火花によって締めくくられた。飛び散る火花は辺りを燃やしておりモビルスーツ戦の激しさと市民の無力さが伺える。ハサウェイとギギは抱き合うも、そこにケネス大佐が来るとギギがタタっと駆け寄り「怖かった」と抱き着くシーンはちょっと切ない。こうして二人はケネス大佐に保護されることとなる。

 その後再び平穏パート。約束通り翌日に調書を取る。ケネス大佐はギギをあやかるように女神キルケ―部隊に改名することを伝える。ギギを直接的に口説くも振られてしまうところは印象的。ダバオの街歩きするハサウェイはそのスーツ姿も相まって非常にエモい。守る場所を長が歩いてみて回るあの感じ。東南アジアにスーツって凄くいいね……。木陰で休憩するところや海辺を革靴で歩くシーンは見てて飽きない。そして最後は地元の少年のヨットのような小舟に乗り、仲間の船舶に乗り込みダバオに別れを告げる。

 拠点である島に戻ったハサウェイことマフティーは一息つく間もなく付近で不審な潜水艦を見つけた警報が鳴り響いて司令部へ。潜水艦の駆逐にはおそらく成功するも、ダバオから拠点に向けたペーネロペーを向かい打つべく宇宙空間でガンダムを回収し乗り込むという離れ業をやってのける。そして第三の見どころであるペーネロペーとの大気圏内でのガンダム戦が始まる。ペーネロペーに拿捕されていたパイロットがいることに気づくと通信を送って相手の卑劣さを謗るハサウェイ。それに呼応しなんと生身のパイロットを放り出しハサウェイに送るということを実行。無事ハサウェイのコックピット内に回収できるものの「マジかよ、普通死ぬだろ」という感想。ここで「やって見せろよマフティー」という予告のセリフとともに戦闘が始まる。ビームライフルを撃ち合いミサイルが放たれるメカメカしい戦闘はハサウェイを撃破したと勘違いしたペーネロペーが攻撃を受け洋上に落下することで決着がつく。後にハサウェイはガンダム武装を自分自身と誤認させてうまく攻撃を逸らし注意がそれたところを攻撃したと仲間に説明している。こうしてひと段落がつき、次はマフティーの仲間を自称しているオーストラリア北部の町オエンベリへ向かおうとしているところで「閃光」が流れ第二部に続く。

 

 全体を通して銃撃戦、矮小な一市民から見た地上のガンダム戦、海域上空でのガンダム戦と盛りだくさんな中で魔性の女、ギギに翻弄されるケネス大佐とハサウェイが面白可笑しく描かれており登場人物は皆どこかに何かを抱えているあたりが人間臭く魅力的で非常に面白かった。緩急がありつつも時間の流れはその中にいるかのようで緊張感が画面越しにも伝わってきた。細かいところ、特に歴史的背景をもとにしているであろう描写や会話はやはりここから入った人にとっては理解し難く多くの推測を交えることになってしまったので宇宙世紀の履修が望まれる。特別興行で学割無しと少々お高かったもののそれに見合う重厚感のある中身で大満足の映画だった。