アリスとテレスのまぼろし工場

いつもの如く備忘録

ガッツリネタバレあるので閲覧注意

今回は見ててしんどかったのであらすじを書き出すのは控えておく。

大筋としては世界線が分離し現実から剥離した静止系で主人公らが恋だの出会いだのをするストーリー。

冒頭からひび割れなどでこことは違う現実を示唆しており、嫌な予感はずっとしてた。できれば作中のとおりにここが時間の止まった世界で問題の解決とともに再び時間が動き出すハッピーエンドであればいいなと思うが出てくるのは時間の進んだ世界とこの孤立した世界がはっきりとするのみ。

五実(さき)については触れねばならない。この生き物は神の使いや化身かと思いきや、その実はこれらの世界を行き来した唯一の現実存在。だからこそ成長し、感覚があり、匂いがするというふうに描写されている。現実世界では神隠しとなっているのはファンタジーなのに非常に救いがなく融通がきかない。主人公まさむねとむつみの娘だが現実世界の彼らはかなりの時間娘を奪われていて、意気消沈しているところが描写されていた。

いつみはまさむねに恋をするもむつみにまさむねは私のものよと言われ、最後に失恋することとなる。まんまエレクトラコンプレックスだが時間軸の違いにより母娘が対等な恋敵のように見える(その実精神年齢が違うので対等ではないのかもしれない)

まさむねの父はこの世界によって孫娘に会えたと述べているがその代償としていつみ精神的成長を止められ囚われていた数年間を思うといたたまれない。この世界のみに存在する(現実は事故により死亡)というのはフルダイブゲーム中に亡くなりバーチャルのみに生きる状態を彷彿させる。これは21世紀少年にもあった気がする。(亡霊)

さて今回の舞台設定はセカイ系にしてはあまり固まっておらずなんとも言えない。しかも要素を小出しにしているせいで視聴者の立脚すべき前提がわかりにくいものとなっている。どこまでをファンタジーとして受け入れるべきどこまでがリアリティのある現実の常識を所与とするのかが、わかりにくくてとっつきにくい印象を受けた。

一貫して世界の亀裂を神器狼が修復し世界を維持するという設定についてはどんでん返しがなかったものの、亀裂が人に発生し消失する契機があやふや。変化というがその変化量と消失の度合いは正直物語都合であって矛盾ない説明は難しいように思える

そんなファンタジーの世界を土台にしておきながら主人公らには救いがない。どうとでもできそうなのにどうともされずに彼らは鬱屈し隔離された停滞世界に置き去りである。(赤ちゃんの泣き声による時間軸の進展を示唆する描写もあったらしい、再度見る機会があれば確認しておきたい)

最後に現実世界への干渉、痕跡が見受けられた(まさむねの上手くなった絵が廃工場にあった)ものの、それまでである。

 

タイトルはアリストテレスだが中身は永劫回帰を感じた。いや永劫回帰の中で成長する主人公を思うとニーチェからはやや遠ざかるのかもしれない